里1月号を読む3(囚われ者)

そういえば、なぜ私が里を持っているか振れ幅ではまだ触れてなかったですね。


里1月号に天宮風牙さんが火尖小論「囚われ者」を書いてくれて、火尖も旧作15句「偏り」、新作十句「隔たり」を出しているのです。それで手元に里があるのです。そこで自句自解ならぬ、自分自解、たんなる自分語りですが、少し書いてみましょうか。


以前、外山一機さんが書いてくれた小論にあった「西川の句の、良かれ悪しかれ俳句形式に依拠した自らの表現行為の倫理を疑うことのないようなふてぶてしい趣」(敗色のなかに詠う―西川火尖小論―

この一文を読んで、ああそうか、なるほどなぁと思った。これまで何度も触れたが、私は俳句の初学時代、とにかく独学だったので、人の句の型に自分のイメージを流すような練習ばかりしていた。ようは替え歌だ。その上、藤田湘子の20週俳句入門と俳句実作入門をかなりシビアに実践するなど、まぁとにかくこれでもかこれでもかというくらい俳句形式の型にはまることを上達の近道としたのだった。そこに根差した形式への依拠は私の特徴の一つだと思う。実際、風牙さんも「型にはまりながらも型から逸脱しているところ」(「囚われ者」里2017年1月号)と、火尖の俳句の型についての言及がある。そして、型にはまった上で、そこから逸脱しているところが「非凡な魅力」だと言うのだ。もし、そうならとてもうれしいが、いったい私はどうしてこうなってしまったのだろうか。ひとつ心当たりがあるとすれば、というか、そこに答えを求めるしかないのだが、やはり私のこれまでの生き方が影響しているのだと思う。


一番肉体が健康的だったときの仕事は面と向かって人から「底辺」と呼ばれる仕事だった。

周りはリーマンショックのあおりを食らって流れ着いた人が多くて、同期には話の通じる人が多かったが、なるほど、古参の中にははっきり言ってひどい人間もいた。こう言っては申し訳ないが、粗野で野蛮で自堕落な人間たちだ。しかしそれより我々に対する雇い主の扱いの方がひどく、いつしか「早く人間になりたい」が口癖になっていた。そういう職場で三年余り過ごした。ともかく、働かなければ食えないし、卑屈になる以外に耐える方法はなかった。職業で人を侮蔑するというのがどういうことかわかった。せっかく東京に出たのに、ほとんど句会に顔を出さなくなった。適当にごまかして仕事を言うのは辛いし嘘がバレるのは怖かった。世間の目で自分を見ていた。なぜこうなったか。

もともと実家は決して裕福ではないが、私と二人の妹を私大にやれるだけの余裕のある家庭だった(今からすると裕福以外の何ものでもない)。決して学校の科目に拘るような家庭ではなく、教養と思考を何より大切にする家庭だった。実際、妹二人は彼女たちの努力もあろうが、夏期講習程度の塾通いで難関大に入学したのは、思考が鍛えられていた結果といえるだろう。そして一族の多くが生業としている仕事に就いた。私自身、センター試験の一月前に受験勉強を始めて滑り込みで大学に入学できたのは、家庭教育のおかげだとは思う。しかし楽な方へ楽な方へ流れてしまう性格では継続して努力することができなかった。これが致命的で、肝心な時に頑張れない。それでまぁ、前述の「底辺と人から言われる仕事」まで一直線だったというわけだ。一つだけ良かったことは、厳しい環境で思考して初めて広がる類の視野を手に入れたことだろうか。多分、型から逸脱するという部分と、風牙さんの評論中で書かれた「冷静に己の境涯を見つめる」という部分は私の中でイコールで結びついている。


ついでに言うと、これは少し恥ずかしくてあまり公言したくないのだけど、400字エッセイを読めば分かると思うが、全然大したことないことにいちいち大げさにリアクションして、いちいち傷ついてしまうというのが、感受性というか弱さで、もう、モロ俳句に出てしまっていると思う。


そして現在、転職、非正規、正規雇用を経て、そこそこ平穏な生活をしているが、「底辺」で思い知らされた人間のことは、私が私を詠む限り、これからも意味合いを変えながら常に私の中にある。そういう意味でまさしく私は「囚われ者」である。


向日葵に人間のこと全部話す  西川火尖

スポンサーサイト


俳句の振れ幅 | コメント(0) | トラックバック(0)2017/01/20(金)00:43

コメント

コメントの投稿


秘密にする

«  | HOME |  »


自己弁護

kasen

Author:kasen
1984 11 生まれる。
2005 03 俳句を始める。
2006 01 炎環入会

好きな食べ物・ラーメン
好きな建物・図書館
好きなのは言葉。

Twitter...A

nishikawaksn17 < > Reload

火尖箱(お知らせ)

12月
現在迷惑コメント対策のためURLなど書き込めない状態になっています。ご迷惑をおかけします。

打率

探検する

探し物はなんですか

月刊火尖

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる