FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告--/--/--(--)--:--

俳句の海の冒険

人それぞれ俳句を始めるのに適した時期があると思う。早ければいいというものではなく、基本やろうと思った時がはじめ時で間違いないのだが、それでも学生時代にそのタイミングが訪れた人は幸運だと思う。凪の鑑賞の続きを書いていこうと思う。

塊に生るる 姫草尚巳
夏星や金箔は切り子を流れ
梅雨空や髪を梳かす手のこわばり
ビル街の液晶パネルはたた神

金沢大学俳句研究会への参加をきっかけに俳句を始めた姫草尚巳は俳句形式を手探りで押し広げようとしているように感じる。第二号から見られ今号でより多く発表された掲句のような破調はその表れだろう。もちろん俳句を始めて比較的まもない時期に破調に惹かれるというのはある意味通過儀礼的なところがあるが、単純にそれだけでなく、上五をやで切ってからの破調で生まれる切れの深さに興味があるように見える。「夏星や金箔は切り子を流れ」この切り子はカットグラスのことと読んだ。金箔入りの酒などを飲むときのグラスから流れていく様子だと思っていいだろう。や切り+破調の特長的なリズムで生まれた上五の深い切れは読者に夏星を思い描かせてから手元の金箔に視線が落ちていくまでの間に広がる星間の闇を思わせる。
また「梅雨空や髪を梳かす手のこわばり」と前号の「薄雪やつひに足あとのざはめき」「髪掻き上げて耳あらはるる菊桜」に表れているしっとりとした情感も見逃せない。足跡や耳など決して対象を直視しないそのもどかしさを短い俳句形式に押し込めた屈折が今の作者なのだろう。
尚、「ビル街の液晶パネルはたた神」に作者の中の新しい一面を感じ注目した。


アゲハ蝶来ぬ 北條壮紀
春暑しとろりと濁る池の水
仲直りしたにはしたが夏薊

今号からの参加者である。全体を読んだ感じからすると、おそらくこの作者もまた、金俳をきっかけに俳句を始めた作者だろうと思う(ちがったらごめん)。その中の「春暑しとろりと濁る池の水」は巻頭に句会禄のあるお花見吟行で詠まれたもので当日の最高点タイだったものである。暑しととろりが若干つくがよく抑制の効いた句だと思う。また、「仲直りしたにはしたが夏薊」の生な感じと夏薊の取り合わせはすごく面白いと思った。まだ少しぎくしゃくしている微妙な状態を夏薊がうまく表している。その他では「踏切にアゲハ蝶来ぬ列車来ぬ」「自転車に咲く昼顔をほどく雨後」など俳句化というか俳句としての表し方をまずは使えるようにしようという意志を感じる句が多かった。俳句らしさはともすればすぐに俳句臭さになってしまうが、「春暑し」の抑制と「夏薊」の妙と俳句形式を思い切りよく吸収する意志と、説明しすぎではあるが「死にたくねー捕らわれた蟬翅を振る」のナマな素直さが合わさるとどのような句になっていくのか楽しみだと思った。


鳴きごゑ  若林哲哉
ミニ四駆うぐいす餅にゆきあたる
賞状の筒の鳴きごゑ春の暮
海の日や箱に入れずのモデルガン

創刊号「百合くべて百合のかをりの焔かな」「夜の海を掬へば色のなき晩夏」、第二号「家を捨つ父も師走の星々も」と、繊細な感覚にすっと入って来る季語の確かさと言えばいいだろうか、整った句の中に季語の感触が生きているところは彼の特徴の一つだろう。「ミニ四駆うぐいす餅にゆきあたる」のシャーッと走るミニ四駆が、鶯餅に突っ込むときのモチッとした読みごたえはミニ四駆の意外さによるギャップに起因している。そして意外なのに句にしたときにまとまりがあるところが上手いし面白い。「賞状の筒の鳴きごゑ春の暮」賞状の筒の蓋を外せばキュポンとなる、よくそんなシーンが春の暮と合うと気づいたなぁと感心した。同じような題材でいえば創刊号の「ひらくたび光る卒業証書かな」を思い出すが、賞状の句の方がより作者のオリジナリティがよく表れているように思う。
最後に、「海の日や箱に入れずのモデルガン」はかなり面白い。比較的というかほぼ歴史なんてないような海の日という季語を使って、新しい祝日の何ともいえない手持無沙汰な感じや、箱の外に置かれた黒い塊の所在なさげな様子とがよくマッチしている。海という字の剥き出しの水のイメージと措辞の距離感がお互いを助け合っていて、弱い季語を上手く支えている。「夏の海」でも句としては成立するが、それだと実際の海を想像してしまい、モデルガンがやや押し負ける。その意味でも「海の日」は面白い選択だと思った。季が動かないかといえば、より適したものはあるかもしれない。しかしここで海の日を持ってきたところに、若林哲哉が上手いだけではない自らの俳句を手に入れようとしているように感じた。

この鑑賞には結構時間がかかってしまって、もたもたしているうちに何と第四号が発刊されるという。金沢大学俳句会がどのように変化を深めていくのかただただ単純に楽しみである。
スポンサーサイト


書評 | コメント(0) | トラックバック(0)2018/11/11(日)00:00

«  | HOME |  »


自己弁護

kasen

Author:kasen
1984 11 生まれる。
2005 03 俳句を始める。
2006 01 炎環入会

好きな食べ物・ラーメン
好きな建物・図書館
好きなのは言葉。

Twitter...A

nishikawaksn17 < > Reload

火尖箱(お知らせ)

12月
現在迷惑コメント対策のためURLなど書き込めない状態になっています。ご迷惑をおかけします。

打率

探検する

探し物はなんですか

月刊火尖

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。