オレンジ・フィルム・ガーデン
京都に帰ろう、小樽港から船に乗る。
日が西に傾いてきたので、あの日が沈むまで窓辺で本を読もうと思った。
夕日の似合う詩集の類は持ち込んでいないので、
同じような色した新書なんか取り出して、船尾の方には先客が一人、文庫本を読んでいる。
船は文字を読むのに適した速さで進む。海を。
本開く春の航海なかばにて 火尖
日が沈みつつある。オレンジ色の空。こんな旅行はもうできない。
もう、できないことや、会えない人は、これからも増えて行く、仕方がない。
ことあるごとに思い出す人と行った場所に海が含まれていて、そんなことをもう考えるなよ、と思ってしまうほど、全然擦り切れない。何回目の再放送なんだろう。曇ってて夕日が見えなかったくせに、帰るのが大幅に遅れて星だけはいっぱい出てた。
日が沈んだら星を見ようと思う。
海原や春夕焼の雲づたひ 火尖
感傷…またやってしまった。