俳句で世界征服する小説ができた。

俳句帝国 

「おじいちゃん、悪いけどな、俳句がないなら魚はやれねぇよ。」
一向に句を出そうとしない老人を魚屋の店主はじろりと睨みつけた。老人は尚も押し黙ったままである。しかし、老人の腰に目をやると、そこにはちゃんと小型の液晶モニターがぶら下がっている。やれやれ、これだからおじいちゃんは。店主は表情を幾分ゆるめ、
「なんだ、ちゃんと句帳持ってるじゃないか、ほら、こっちで適当な句見繕ってやるから、この鯛ならな20句ほど必要だが。何句あるんだ?じいちゃん」
老人は句帳とよばれたモニターに触れ、魚屋の店主に見せる。しかし液晶画面が白く光る以外何も映さない。句帳は白紙であった。
「なんだよ、句無しかよ。ちゃんと毎日作らないとだめじゃないか。投句はしてんのか?でもおじいちゃん載らないか、ああ、しょうがねぇなぁ。いいよいいよ煮干しくらいならやるよ」
 句無しなど本来なら手ひどく追い返してやるところだが、老人の身なりがそれなりにしっかりしているので、息子か娘の句がいいのだろう。ナイロン袋に煮干しを一掴みいれてやり、老人に持たしてやった。
 すると老人はやおら短冊を取り出し、筆ペンですらすらと書き出した。俳句であった。これにはさすがの店主もびっくりして止めに入る。
「おいおい、じいちゃん、何やってんだ!俳句警察呼ばれてぇのか!よりによってホトトギス様の真似だなんて、死にてぇのか!」
老人は気にするそぶりもなく店主に書きあがった短冊を渡し、
「孫が来るのでな。鯛もらっていくぞ。この句で蔵でも立てい。」
短冊には

餅花の賽は鯛より大きけれ  高浜虚子

と書かれていた。
「た、た、た、たたた、た、高浜虚子!!様!!」
へなへなとその場に崩れ落ちた店主はあまりの衝撃にそのまま絶命してしまった。もちろん周りの客もあまりの出来事に皆絶命した。
 高浜虚子とホトトギス一門が世界を征服して、十年目の年の瀬であった。

(フィクションです)
つづく

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テーマ:俳句│ジャンル:小説・文学
未分類 | コメント(0) | トラックバック(0)2008/12/25(木)11:56

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自己弁護

kasen

Author:kasen
1984 11 生まれる。
2005 03 俳句を始める。
2006 01 炎環入会

好きな食べ物・ラーメン
好きな建物・図書館
好きなのは言葉。

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